神子元レース on Gaia
(関東選手権 第5戦)

Date: Oct, 16-17, 2004 
佐島沖〜神子元島〜小網代(99マイル)
スタート 10/16 11:00am



 最近、巷ではロングレース離れとやらで、KSC(関東相模湾サーキット)の参加艇もめっきり減っているとか。そういうわたしも久々のロング。やっぱりOcean Going!の精神もダイジだし、ブイばっかり回ってないでたまにはロングにもチャレンジしなくちゃ〜、というメンツが集まるのは、名付けて「Gaia外洋帆走部」。ロングって辛いのわかってるんだけど…夜中に必ず「あ〜、なんで乗るって言っちゃったんだろう〜」と決まって後悔するんだけど…でも自分の最近の軟弱なヨット人生に喝を入れなくちゃだわ、と思い行く事に。

 前日は潮流データとって、チャートワークして、ハンディGPSにポジション入れて、あったかグッズと速乾ウェアとオフショアカッパを詰め込み、あとは消化のいいご飯食べてお風呂にゆっくり入り就寝。
※ あったかグッズ:
ブレスサーモあったかババくつした、マイクロフリースババシャツ、フリースネックウォーマー、フリース帽。フリース様々だ〜

 今日明日といい風吹くみたいだし、ちょっと楽しみになってきた〜♪ なんてのも束の間、マリーナに着くと予想以上に 風がつおいぃぃいぃいいぃぃ。 少しブルーになりつつも、吹かないよりはマシ!などと甘い事を考える。ジャックライン、ハーネス、自己点火灯、ライフラフトなどをセットし、佐島沖のスタート地点へゴー!この時は12時間後にあんな修羅場になるとは、知る由もなし。

 スタート地点から神子元灯台へのベアリング224度。ほぼ真追手の風。11:00一斉にスピンスタート。時々20ノット近くのパフを受けながら、だましだましおとし、艇団の沖側をキープしながらスピンで爆走する。行け行け!ゴーゴー!お尻の大きいガイアにとっては絶好の風。

 スピントリマ&クランカーはキツイので1時間おきに交代しながら進む。南下するにつれて波が強烈になってくる。まわりはブローチング続出。ガイアも 激ブローチングと野性的なジャイブ(笑) を各1発ずつしでかしたけど、トラブルには発展せず。ホッ。

 南下するにつれて、風も徐々にあがってくる。艇速12ノット超える事もしばしば。野崎御大に、「スピン潰すとバーストするぞ〜」、と言われていた矢先に スピン大爆発! ひー、やっちゃった〜。テープだけになったリーチ側を慎重に手繰り寄せ、ハリヤードも無事回収。とりあえずNo.3の観音開きで対処し、折をみて再びスピンホイスト。

 バウチンすると波が後ろまで押し寄せてくる。のぼりになる前にカッパを着ないと…。そしてそろそろジャイブポイント。野崎御大に「あとどれくらいでジャイブですかねー」とのたもうと、「あと5分はしない」というので、一足お先に夜支度の着替えのためキャビンに入る。おぇー苦しい!着過ぎて動きにくい〜。でもやがて来るおっとろしい上りを考えると、これくらいで丁度良いはず。キャビンの中でマグライトやコソ食い用チョコレート(笑)などをポッケに忍ばせて、そうそう、平らなうちにトイレも済ませて…などとやっていると、いきなりジブアップしている模様。え?またスピン破けたのかなー!?と思っているとスピンダウンしてジブジャイブのコール。慌てて外へ飛び出す。爪木のあたりから、風はゆうに30ノットを越え始めたので、先行する大型艇もスピンジャイブは断念した模様。

 明るいうちに神子元にとっつくなんて〜!ずいぶん早い展開だけど、風と波がものすごくて、No.3でもブローチングしそう。これで上りになったら一体全体どうなっちゃうんだろう。フリーのうちにワンポンリーフにする。そして神子元に寄り付いて徐々にセールを絞っていくと、とてつもない風で、このままじゃワンポンでもとても走れないことが判明。ものすごい突風が来て、ジブダウンのコール。にわかにサバイバルぽくなってきて、いちいち叫ばないと何も聞こえない。落ち着いてストームジブをセット。バウチームなかなかいいゾ(自画自賛)。今回は心の友・マッキ―がいないから、バウレディースじゃなくて、ダンシとなんだけどねー。

 野崎御大の早めの対応と機転のおかげで、ガイアは嵐の中でもちゃんと2枚のセールを揚げて、苦しいながらも上り始めた。一緒にアプローチした周りフネを見ると、まだセールチェンジに手間取っていてどんどんシモに流されていったり、ベアポールで右往左往するフネも。16:32神子元灯台をマグ0に見る。でもとてもロールコールできるような状態じゃない。まさに嵐。 空は晴れているんだけど。ワンポンのメインは逃がしっぱなし、ストームもほとんど当てられない状態でしのぐ。ガイアの風見はぶっ飛んでいってしまった。ケットフィークによると、風速は47ノットを記録したとか。

 ハイクアウトしていても体が波で揺さぶられ後ろに吹っ飛びそう。初心者の人もいるので、まだ明るいけど、危ないから全員ハーネス着用とする。始めてロングに乗ったタカダさんに、ハーネスのつけ方を教えて、付け替える時に気をつけることや、タックの時に準備できたかどうかは自分で大声で伝えることなどを確認。マッキ―いないからアチキが周りをよく見てフォローしようと心に決める。メントリが次々に脱落。便器を抱えたまま唸ってる若者も…。これまでのところ、一番元気なのは、野崎御大、わたし、キヨ兄、茂木さん。

 気付くとあたりはものすごい夕焼け。でっかい太陽がガイアの真後ろに沈み、あたり一面マッカッカ。そんな平和な空とは見事なギャップを奏でながら風はいつまでたってもモーレツなまま。前の方でハイクアウトしていると、10秒おきぐらいに至近距離から顔面めがけてバケツ一杯くらいの波を食らう。カッパの前立てをキッチリ閉めていても、あっという間に首からドクドク浸水し、胴回りにタポタポ海水が溜まってしまった。サイアクだー。これから夜通し走るのにー。それでもこの時点で元気なのは、野崎御大、あたし、キヨ兄、茂木さん。他死亡者多数。大変だけど、これぞ外洋帆走部。あたしは最後まで元気でいるんだ〜と心に誓う。

 とにかく、真のぼりなのでレールにぶらさがりひたすら耐える、耐える、耐える…。日が暮れてふと空を見ると、今度はおっこちてきそうなくらいの満点の星。でも下界は相変わらずモーレツな風。キヨ兄、高田さんも電池切れてきた。清水さんも死亡。 まだ元気なのは…野崎御大、あたし、茂木さん…。タハハっ。 

 寒くて辛くて死にそうなのでなんとか気を紛らすために、こっそり 一人鼻歌メドレー を始める。最初はミーシャからにしよっと(笑)。あとは、もしもの時にちゃんと動けるように、5分おきにグーパーグーパーを繰り返し、30分おきに現在位置、小網代のベアリング、残航を野崎御大に伝えよう、と自分なりに決める。

 どれくらいたったか、ふと、前に見える町の灯りは一体どこなんだろう、と思い、お腹からGPSを出してチェック。前は波浮だ!かなりのリーウェイでこのまま行くと大島なんて全然かわせない事が判明。ストームにワンポンじゃ上れないのも当たり前だけど。野崎御大と相談してタックすることにする。タックの準備をはじめると、ストームのカミジブシートが外れていた。付けに行こうと思っていたけど一番前に座ってるキヨ兄とハーネスラインが交錯して危ないので、一応キヨ兄に「ジブシート付けに行けますかー???」と叫ぶ。「行ける」とのことなのでお願いする。キヨ兄グッジョブ!でもタックするときになったらキヨ兄が急にパニックに!!慌てて後ろに中継してタック取りやめ。落ち着いて見てみるとキヨ兄のハーネスラインがジブシートとこんがらがっていた。フー危ない、危ない。モーレツな風でなかなか回せずに、3回目くらいにやっとタック完了。正面やや上に門脇灯台。うぉー、すごいアングルだ(汗)。あとは伊豆半島にとっつくまで伸ばす事に。

 のぼりになってからは、とてもキャビンに入るような状況じゃないので、意識朦朧のままレールに座りっぱなし。飲まず食わずだったので、口の中はしょっぱいのを通り越し、にがくて粘々に。おぇーーーっ。今思い出してもキボチワルイ。しばらくして風が少し右にに振れたのか、川奈―初島間を狙えるようになってきて、そろそろタックをすると三崎くらいに向けられそう。再びタック。風は相変わらず。

 三浦半島に近づいてきてから徐々に波がおさまり、風もほんのちょっとだけ落ちてきた。しばらく経ってからNo.3にチェンジ。シモのグルーブで揚げる事もあって、安全第一で行くため、「降ろし&揚げ」。バウチームの大きなお仕事もこれで完了か。2:56小網代湾にて無事フィニッシュ。あれだけ長く走ってきたのに、結構ダンゴでフィニッシュ。ガイアは大島までスターボーを伸ばしたのが良かったのか、まずまずいい所。

 で、結局最後まで元気だったのは、 野崎御大、わたし、茂木さん・・・(笑)

 いやはやとんでもないレースでした。でもガイアは大健闘し3位。4艇リタイア、7艇完走。
月曜日会社の洗面所で顔を見たら、唇ボロボロ、鼻の下とあごの下は皮むけてガサガサ。一晩中カッパの襟についているベルクロが顔とこすれて痛くてヒリヒリだったから。うーん、なんだかあんな嵐の夜レースしていたくせに、なんでアタシは今新宿センタービルにいるんだ?と恐怖にも似た違和感を覚える(笑)。

 フネの上では最後まで元気だったとは言え、はっきり言ってロングは暫くノーサンキューという感じ。もう少し経ったら、きっとまた行くんだろうけど、なんていうか、こう、精神鍛錬を通り越して性格ゆがみそうだしー。、ロング嫌いになりそう。だって辛いんだもーん。終わった後の達成感、暫くは語り草になるだろう数々の出来事、修羅場を乗り越えて生まれた結束。誰もが持っている冒険心。これらはまさにロングの醍醐味だけど、そういう喜びはもっともっともっと大きくなければ割に合わないっつーか。レースが沢山の参加艇でもっともっと盛り上がっていて、皆がもっともっと注目していて、勝つ事がもっともっととてつもない大きな栄誉だったら、こんな気持にはならないのにな。辛い思いをしてもやり遂げたとしても、わずかな参加艇だけの間で語られているような寂しいレースではなんだか物悲しいし、そのうち、外洋レース=物好きのレースなんてことになっちゃうんじゃないかと少々心配〜。

 とりあえず今回も、泣き言いわない!ゲロ吐かない!で完走できたのでよしとします〜。
この辛さを楽しむ余裕は残念ながらまだ持ち合わせていないけど。

 

本日のメンバー:9人
野崎御大、もぎもぎ、宮代さん、清水さん、
キヨ兄、タカダさん、高橋君、田中君、アタシ。
みなさんお世話になりありがとうございました〜 !!



 

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